祝！新紙幣発行　新一万円札の顔・渋沢栄一【埼玉県】

　長野県出身、フリーアナウンサーの塩原桜（しおばら・よしの）です。学生時代は東京で過ごし、アナウンサーとして働いた、山形・埼玉、そして夫の地元である神奈川など様々な土地に縁があります。ゆかりのある土地を中心に各地の良いところ、おもしろい場所、おいしい物など、どんどん紹介していきます！
　今回は、埼玉県内で大いに盛り上がっている新紙幣発行についてお伝えします。

　2024年7月3日、一万円、五千円、千円の3種類のお札が新しくなりました。お札のデザインや肖像は、財務省（通貨行政担当）、日本銀行（発行元）、国立印刷局（製造元）で協議し、最終的に日本銀行法によって財務大臣が決めることになっています。
　お札の肖像は偽造防止のため
1．精密な写真が入手でき、
2．品格のある紙幣にふさわしい肖像、
3．国民各層に広く知られ、業績が広く認められている、
などの観点で、明治以降の人物から採用されるそうです。
　千円札は世界で初めて破傷風菌の純粋培養に成功し、破傷風の血清療法を確立した、北里柴三郎。五千円札は近代的な女子高等教育の発展に尽力した津田梅子。そして新一万円札は、近代日本経済の父ともいわれる渋沢栄一です。
　埼玉りそな銀行では当日から新紙幣に交換ができると聞き、交換してきました。

　決済のキャッシュレス化が進む現代ですが、お札の需要は高く、発行高は年々増加しているといいます。こうした中で、万一、偽造されたものが出回ると安心して使うことができないため、偽造防止の技術を使い、偽造しにくいお札の発行が必要です。また、年齢や国籍、障害の有無にかかわらず、誰もが使いやすいように更に工夫されています。
　この3券種は、前回、前々回と約20年おきに新たなデザインになっています。

　特に、1984年・2004年と2回にわたって福沢諭吉の肖像が選ばれていた一万円札に、渋沢栄一の肖像が採用されることで、埼玉県は大いに盛り上がりました。県として、「渋沢って、埼玉らしい」というキャッチコピーの下、多くの人に渋沢の功績と埼玉ゆかりの偉人であることをPRしています。

　渋沢は生涯で約500もの企業設立などに関わり、実業界で活躍した他、教育・社会事業・民間外交にも尽力した人物です。埼玉県深谷市で生まれた渋沢が、広く国民に手に取ってもらうお札の顔となったことで、県内では発表直後から渋沢に関連する番組の制作やイベント、アンドロイドの製作など力を入れてきました。
　渋沢栄一が設立に関与した企業は、多くが名称を変えながら存続、発展しています。東京瓦斯会社（現：東京ガス）や、東京ホテル（現：帝国ホテル）、東京株式取引所（現：東京証券取引所）、東京電灯会社（現：東京電力ホールディングス）など多くのジャンルの企業に関わっていたことが分かります。
　また、教育も重んじていたため、大蔵経済専門学校（現：東京経済大学）などの設立や、「日本女子大学」「東京女学館」などの設立にも力を尽くしたといいます。
　さらに、社会格差をなくすための公共事業にも力を入れた渋沢は、「養育院（現在は東京都の事業として継承）」「博愛社（現：日本赤十字社）」などの設立にも貢献しています。
　自らが提唱した「道徳経済合一」は、多くの人たちにとって、学びの多い考え方です。今後はお札の顔として、これまでの渋沢の功績を広く知ってもらえるとうれしいです。

　ちなみに、今回のお札の特徴は大きく3つあります。
1.世界初の偽造防止技術を採用
3Dホログラムで3次元の肖像が回転しているように見えるほか、高精細すき入れで、肖像の背景にかなり精密なすかしが入っています。


2.ユニバーサルデザイン
額面のアラビア数字を大型化し判別しやすくしたほか、指で触って識別できるマークを券種ごと違う場所に配置しています。
3.独特な手触り
インキを高く盛り上げ、額面や肖像などの触り心地を変えています。また、伝統的な和紙づくしの技法を応用し、みつまた、アバカ（マニラ麻）などを原料にした用紙で製造しています。
　これらの特徴により、誰もが使いやすく、偽造しづらい紙幣となりました。デザインが新しくなったことで違和感があるという人もまだまだ多いと思いますが、20年に1度のデザイン刷新。見た目だけでなく、新たな技術がふんだんに使われた新紙幣をじっくりと観察してみてくださいね。