2020.07.16
こんにちは。NHK長野放送局、NHK静岡局出身の大下佳菜です。
大学を卒業して新人時代から5年間を過ごした長野県。
信州でたくさんのことを学び、感じ、教えてもらいました。
たくさんの思い出が詰まった土地です。
その中でも特に印象に残っている長野県にまつわる歌についてご紹介します。
それは、みなさんが口ずさむ『信濃の国』です。
県民に愛される『信濃の国』
『信濃の国』とは、長野県の県歌のこと。
作詞は浅井洌(1849年 – 1938年)作曲は北村季晴(1872年 – 1930年)によって1900年(明治33年)に発表されました。
県歌として制定されたのは、1968年(昭和43年)のことです。
私がこの歌を知ったのは、長野局での勤務が始まる初日でした。
「信濃の国を歌えるようにならないとね、信州人として認めてもらえないよ。」
忘れもしない、いや、忘れることのできない上司の言葉です。
まだまだ長野県について知らないことばかりだった私。
研修とともに歌について調べ、歌詞を覚える日々が始まりました。
そして驚いたのは、県民のみなさんが歌えること!
今から5年前に県が行ったアンケートによると、
およそ8割の方が「全て歌えるまたは1番を歌える」と答えたそうです。
信州がよくわかる!歌詞に注目
6番まである『信濃の国』。歌詞をご紹介します。
1.信濃の国は十州に 境連ぬる国にして 聲ゆる山はいや高く 流るる川はいや遠し 松本伊那佐久善光寺 四つの平は肥沃の地 海こそなけれ物さわに 万ず足らわぬ事ぞなき
2.四方に聳ゆる山々は 御嶽乗鞍駒ヶ岳 浅間は殊に活火山 いずれも国の鎮めなり 流れ淀まずゆく水は 北に犀川千曲川 南に木曽川天竜川 これまた国の固めなり
3.木曽の谷には真木茂り 諏訪の湖には魚多し 民のかせぎも豊かにて 五穀の実らぬ里やある しかのみならず桑とりて 蚕飼いの業の打ちひらけ 細きよすがも軽からぬ 国の命を繋ぐなり
4.尋ねまほしき園原や 旅のやどりの寝覚の床 木曽の桟かけし世も 心してゆけ久米路橋 くる人多き筑摩の湯 月の名にたつ嬢捨山 しるき名所と風雅士が 詩歌に詠てぞ伝えたる
5.旭将軍義仲も 仁科の五郎信盛も 春台太宰先生も 象山佐久間先生も 皆此国の人にして文武の誉たぐいなく 山と聳えて世に仰ぎ 川と流れて名は尽ず
6.吾妻はやとし日本武 嘆き給いし碓氷山 穿つ隆道二十六 夢にもこゆる汽車の道 みち一筋に学びなば 昔の人にや劣るべき 古来山河の秀でたる 国は偉人のある習い
1番と2番は地理や自然について
3番は産業について
4番は名所について
5番は偉人について
6番は夢を運んだ鉄道のように一生懸命進もうと励ましています。
まるで信州を学ぶ教科書のような1曲です。
曲調は、行進曲を思わせる勇ましささえも感じるようなメロディですが、
4番は曲調、テンポが変わり優雅なメロディーとなっています。
JR長野駅の新幹線ホームの発車メロディとなっています。
訪れたときには耳を澄まして聞いてみてくださいね。
郷土愛の証!?みんなで合唱
長野県で生まれ育った同僚によると小学校へ入学すると、授業で習い覚えたそうです。運動会、キャンプなど行事にも欠かせない歌だったと話してくれました。
さらに、信州のみなさんは大人になっても県歌を歌う機会があります。
それは、送別会や忘年会など。私が勤めていたNHK長野放送局だけではないようで、他の会社でも歌われているとのことでした。食事に行ったお店で突然歌い出すグループがあって、びっくりしたのを覚えています。
そして、県外で同郷の方に会った時。肩を組んで歌うと話していました。
カラオケの締めに歌うと話していた方もいました。
ちなみに、信濃の国のアクセントにも特徴が。
頭のシにアクセントを置くシナノノクニではなく、
信州のみなさんはシナノのノにアクセントを置くシナノノクニと読みます。
アクセントが違うとお叱りの声が届いてしまったこともあると過去の話を聞いて、紹介するときには、それはそれは緊張したことを覚えています。
県民を励ます歌に
それは東日本大震災の翌日に発生した長野県北部地震。
当時、長野県内で放送する朝のラジオ番組を担当していました。
電話インタビューを予定していたが、前日に急遽内容を変更し信濃の国を流しました。すると、いつもよりも多く反響をいただきました。
「聞きながら大きな声で歌いました」「励まされた」
「みんなで頑張ろうという気持ちになった」など。
信州のみなさんにとってとても大きな存在になっているんだと実感しました。
そして、『信濃の国』は、2018年に制定50周年を迎えました。
昨年は台風19号による災害。今年は新型コロナウイルスの感染拡大。
『信濃の国』を聞いて元気を出して前へ進んでいるという方もいらっしゃると思います。
信州のみなさんの郷土愛を感じることができる『信濃の国』。
名所や歴史を学ぶこともできます。
歌詞を参考に長野県を巡ると違った魅力を見つけられるかもしれません。
お世話になった土地をゆっくりと訪れられる日がくることを願っています。