お客さんとの会話を大切に、1人1人に合わせて靴を作っていく匠の技術で生み出される「ビスポークシューズ」。石膏でお客さんの足型をとる独自のスタイルで作られる、生活に寄り添ったシューズを京都から日本、そして世界へ発信するために変化し続ける、Andante(アンダンテ)代表、靴職人の八巻裕介さんにお話を伺いました。
【聞き手:長崎真友子(女子アナ47代表 元九州朝日放送アナウンサー)】
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2022.04.18
お客さんとの会話を大切に、1人1人に合わせて靴を作っていく匠の技術で生み出される「ビスポークシューズ」。石膏でお客さんの足型をとる独自のスタイルで作られる、生活に寄り添ったシューズを京都から日本、そして世界へ発信するために変化し続ける、Andante(アンダンテ)代表、靴職人の八巻裕介さんにお話を伺いました。
【聞き手:長崎真友子(女子アナ47代表 元九州朝日放送アナウンサー)】
―「アンダンテ」のルームシューズは、フィット感がとてもあり、履いていないような軽い感覚で、ルームシューズに最適だと思います。いつ頃から作り始めたんですか。
コロナの緊急事態宣言の時に作ってみようと思い、できたものなんですが、「アンダンテヒュッゲ」という名前にしました。「ヒュッゲ」ってデンマークや北欧の言葉で、居心地の良い空間とか、穏やかな時間とかを表す意味なんです。日照時間が短い冬の季節が長い北欧ならではの、家の中で過ごす時間や空間にフォーカスしている文化なのかなと思うんですが、日本人が家の中で過ごす感覚とちょっと違ったりするなと。
今、コロナ禍で、家での過ごし方を皆さんが再考していると思うんですが、ビスポークシューズメーカーとして、お客さんに新しいスタイルとして履いていただくにはこれが良いかなと。
それと、僕はマイスターに靴作りを習ったんですが、実は最初に作るのがスリッパなんです。基本構造は一緒ですが、日本人に合わせてより良いものにならないかと以前からずっと考えていました。
たまたまコロナというタイミングが、やってみるきっかけになりました。
―なるほど。北欧仕込みということですね!
そうですね。今までの日本人が考える家での時間は、リラックス。そのリラックスもだらけて本当に寛いでしまう感じが強かったと思うんですが、北欧でのヒュッゲは、ろうそくや温かみのある照明でスポットを当てて読書を楽しんだり、家族や友人など大切な人と食卓を囲んで会話を楽しんだりと、寒暗い時期を楽しく上質に過ごす文化です。
コロナ禍で、リモートワークも含めて家で過ごす時間が増える中で、仕事や読書、人と会話する時にも、足元からクッと支えてくれるアイテム、だらけるというより、ほんのちょっと緊張感を持てるものを提供できたら良いなと思っています。
―私も今履いていると、それだけで気分をあげてくれます。例えば、リモートワークで仕事をしていても、家族と過ごす時でも、リラックスはするけれど、足元に少し緊張感をというのが想像できました!
―構造や足にフィットさせるためには、こだわりがあると思うのですが?
日本人とヨーロッパ人では、足の形状が結構違ったりするんですね。日本人はヨーロッパの人と比べたら、踵の骨が小さかったり、筋肉のつき方が微妙に違ったりするので、日本人にどういう風に履いていただくかというところから含めて、骨の構造から全部考えています。
足というのは、骨だけでなく、筋肉や関節、靭帯や腱など全体的なトータルバランスでの成り立ちになっているんです。
―足って土台ですものね。全ての体の体重を支えてくれている足だからこそ、履いているものって重要だと思います。
左右で足の形状が一緒っていう方はほぼいないので、僕も右脚が5ミリ短くて骨盤の高さが違います。筋肉がしっかりあるので、若い時は気が付かないんですが、40代とか50代になってくると、それが腰や首にきたり、やたら片方だけ凝りやすかったりというのがあるんです。そういうのが、実は、骨盤の高さや姿勢、癖が関係していたりするので、その方の適切な位置を探して履いていただくのが良いと思います。
―なるほど。2人子どもを産んだんですが、子どもを産むと骨盤って緩むじゃないですか。骨盤も筋肉も整え時だと言われたりするんですけど、産後にこういった靴を履いていたら良いでしょうね。
妊娠中から産後に緩んだ骨盤は少しずつ妊娠前の状態に戻りますが、骨盤に限らず体はすぐに戻らないため、骨盤が歪みやすく腰痛になったり、足も土踏まずが低下して疲れやすい状態になりますが、安定した姿勢で立つ理想的なフォルムになっているので、履いていない状態で赤ちゃんを抱っこするのと、履いた状態で抱っこするのとでは、全然体の負担が違って、助けにはなるんじゃないかなと思いますね。
女性ももちろんですが、男性も含めて日本人の7割くらいが偏平足気味とか、偏平足っぽいといわれています。土踏まずを程よく支える作りになっていて、大半の方に対応できるかなと。
―アトリエも含めて京都にありますよね。京都といえば日本の代表でもありますが、海外のお客さんも多いですか?
コロナ前は、世界中からお客さんが来られていました。足型から採って木型を作るという特殊な作り方をしているので。医療業界では結構あるんですが、ビスポーク靴で取り入れているのは世界でほぼないか、ないに等しいので、興味を持って来ていただく方はすごく多いです。
―ザ・職人というか、八巻さんにしかできない神業だと思います。
そこがウリですよね。ビスポークの靴を作る前は、大学病院などで足や靴の分野についてカンファレンスすることや、足や体に疾患がある方の靴製作を専門にしていました。
というのも、実際に来ていただいたお客様に、足の悩みがあるとかないとか関係なく、全ての方に対応できるのがビスポーク靴だと元々思っていたので、それをするためには足や体の知識、疾患に対してどんなアプローチをするのかを知る必要がありました。どっぷりとその勉強をしてから、元々やりたかった形で仕事をやっています。
―そもそもなぜ京都という土地を選ばれたのですか?
正直に言うと、当初この仕事をするのはどこでも良かったんです。京都でやる意味があると思ったのは、京都は日本の中でも人が歩く街だと思ったからです。東京や大阪だと街が大きすぎて、スポットまでの移動は車や電車で済まし、道中を楽しむ感覚ではないように思ったので、それができるのが京都の街だなと思いました。
―歩く街、京都。素敵です!確かに私も京都に行くとタクシーなどでなく歩きたくなるんですよ。
こういった技術は人に見てもらおうと思うと、たくさんの人に助けてもらう必要があります。東京ではスポットにならないと省かれてしまう場所でも、観光地である京都では、点と点の導線にもお店や発見があるので、歩いていたら、たまたま見つけて、「あら、すごい素敵!」と入ってきていただいたお客さんと会話できるのが当店の強みなので、そういうところが京都は良いんじゃないかなと思いますね。
―広報で、色んな方に見ていただく方法、どういうことをされてきましたか?
基本は工房兼店舗で外から見える形で仕事をさせていただいて、扉を開いてくれたお客さんと直接お話しするのが一番の強みですが、ウェブサイトやSNSを使って基本情報や顧客様の靴をギャラリーとして閲覧できるようにしています。また、東京の百貨店さんに入って、色んな方を紹介していただく機会も増えています。
最近はコロナで、京都に足を運んでいただくのが難しいのと、実際にどうやって仕事をしているのか、多くのお客さんが興味を持たれていると思ったので、足の型を採って木型ができるまでの「プロモーション動画」を作りました。
ありがたいことに日本だけでなく、海外からの反響もすごく良く、行ってみたい、見てみたい、どういう風にやっているのかとか。お店で直接会話して知っていただくというのが一番大事ではありますが、今の時代に合わせて色々と働きかけていく必要があるなと考えているタイミングです。
―なるほど。ちなみに課題などありますか?
今やっている技術でずっとやっていけるとは思っていないので、向上、変化していかないといけないと考えています。変化するためには色んな人と会うことが大事なので、回数が減っている今の時期というのは、物作りをする人間としては、結構つらいです。
コロナ前は、中国など海外に出張へ行ったりして、色んな話をしたりするんですが、新しいものに対して内向きな方が日本の職人さんに多いなと思うんです。中国へ行って感心したのが、職人さんが貪欲なので、あれはどうやってるの?これはどうやってるの?とすごく聞いてくれるんですよ。そういう熱意がわかると、人と会う楽しみにもなるので、今後も重視しながら、色んな状況に対応できたら良いなと思いますね。
―一つ一つの出会いと会話を大切に。ビジネスマンとして私もこのコロナ禍で改めて実感しています。
★女子アナ広報によるワンポイントアドバイス!
対面が難しいからこそ、動画はもちろんSNSの活用も大切ですね。御社のInstagramは色調や写真の撮り方もおしゃれでフォロワーさんも多いです。しっかり返信をしたり、コミュニケーションをとっていくことはファン化につながるで続けてください!少しサービスの出し方を工夫した上でメディアプロモーションも年に数回でいいので入れていくといいと思います!
―最後に、物作りなどを通じて、八巻さんの夢を教えてください。
アンダンテの靴の作り、ビスポークの1人1人に合わせて靴を作っていくという技術自体が、今までなかったものだと認識しているので、アンダンテができる前とアンダンテができた後とでビスポークの靴作りの常識のようなものが少し変わったら良いな、変えられたら良いなと。日本だけ、京都だけとかではなく、色んな方に僕の技術や、アンダンテでやっていることを知っていただいて、実際、それを使っていただいて、これもありだなと思っていただけたら良いなというのが長い夢です。
―ルームシューズも含めて、「靴文化」が変わっていくと良いですね。京都初の世界の物として、広まれば良いなと思います。ありがとうございました。
【取材後記】
八巻さんの、冷静沈着なお姿とは想像もつかない程のモノづくりに携わる姿勢、情熱が伝わってきました。そして、人一倍身体や足の構造を勉強されているからこそ本当にいいものが分かる。実際にルームシューズの採寸をしていただきましたが、測定の仕方も足の型をしっかりとって自分の足の形に完全にフィットするオンリーワンのシューズを作っていただきました。
1年以上愛用していても形も崩れず毎日をちょっとだけ優雅な気持ちで過ごせるようになったのもこのルームシューズのおかげだなと感じています。
■Andante(アンダンテ)代表・靴職人 八巻裕介
高校卒業後、兵庫県の整形靴技術者養成校にて、ドイツの国家資格であるオーソペディシューマッハマイスターの称号を持つ、エドワルド・ヘルプスト氏に師事。
養成学校卒業後、本場ドイツで整形靴を学ばれたバイタルフス高知の関 耕二氏に修行入りました。
京都の義肢装具会社に就職し、大学病院、京都市内の病院で、医師やフットケア特定看護師と連携して、病気による足の様々なトラブルを抱えた方のオーダー靴や足底板の製作を行いました。
2015年1月に、同じく整形靴の修行を積んだ奥様の貴子さんとAndanteを設立。医学的根拠に基づいた機能性と、美しいフォルムを兼ね備えた靴を実現しています。
企画・制作
女子アナメディアPR局
2008年九州朝日放送株式会社にアナウンサーとして入社。20011年より東京にてフリーアナウンサーとしてフジテレビ「スーパーニュース」、TBS「はなまるマーケット」、テレビ朝日「グッド!モーニング」日本テレビ「女神のマルシェ」などでレギュラーを務める。
2015年に地方創生アナウンサー団体「女子アナ47」を運営する株式会社Cheeringを設立。ソーシャルビジネス創出、企業や自治体の企画・PR、イベント、動画制作、スピーチアカデミーの運営など、アナウンサーのキャリアを生かしたビジネスを展開している。