「弁護士などの専門家ってけっこう高いんです!」費用の兼ね合いで、スタートアップ企業では専門家に依頼ができなかったり、契約交渉で競り負けてしまったり。そんなスタートアップ企業と、大手企業との“法務格差”を数多く見てきました。テクノロジーを使って課題解決を目指す、弁護士と経営者の顔を併せ持つ、代表取締役山本俊社長にお話を伺いました。
【聞き手:牛島奈津子(女子アナ47 元NHK長崎放送局、サガテレビアナウンサー)】
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2022.04.05
「弁護士などの専門家ってけっこう高いんです!」費用の兼ね合いで、スタートアップ企業では専門家に依頼ができなかったり、契約交渉で競り負けてしまったり。そんなスタートアップ企業と、大手企業との“法務格差”を数多く見てきました。テクノロジーを使って課題解決を目指す、弁護士と経営者の顔を併せ持つ、代表取締役山本俊社長にお話を伺いました。
【聞き手:牛島奈津子(女子アナ47 元NHK長崎放送局、サガテレビアナウンサー)】
―まず、どのような会社なのか、起業のきっかけなども含めて教えていただけますか。
「法務格差を解消する」をビジョンに、2017年に創業した、法律とテクノロジー(IT技術)を組み合わせた「リーガルテック」サービスの開発や運営を行っている会社です。
弁護士12年目なんですが、もともと大手の法律事務所で働いていました。弁護士1~2年目の頃、新たなビジネスモデルの創出を目指す、スタートアップ企業の経営者たちと出会う機会がたくさんありました。そういったスタートアップ企業が大企業を相手にする際、資本力がないために弁護士などの専門家に依頼できなかったり、交渉力で競り負けてしまっていたりしていたんですね。そういう企業をサポートしたい、そのための専門の法律事務所を作ろう、という思いからGVA法律事務所を2012年に設立して独立しました。
また、2016年、AIブームの年でした。人の力だけでコストが上がったり、弁護士の人数が必要になったりと法務格差を埋めることに限界を感じていました。そこで、専門業務である弁護士業務にもAIが使えるのではないかと考えたのが、GVA TECH株式会社を創業するきっかけです。弁護士などの専門家って、依頼するとけっこう高いんですよ。世の中のビジネスも複雑化してきたこともあって、テクノロジーを使って法律業務の構造を変えないといけない、そのことに社会的な意義があると思いました。
―スタートアップもリーガルテックといわれる領域も、時代の変化をよんで、いち早く動かれたんですね。
ー御社では、サービスの“開発”から手掛けていらっしゃるということですが、どういったものなのか、教えていただけますか。
法律とテクノロジー(IT技術)を組み合わせた「リーガルテック」サービス、GVAシリーズ(GVA NDAチェック、GVA assist、GVA 法人登記、GVA 登記簿取得)を提供しています。
注力している製品の1つが「GVA 法人登記」。企業がオフィスの移転や役員変更、商号変更といった会社の状況が変わる際に、法務局に変更登記の申請を行うことが義務付けられていますが、この申請に必要な書類を安く(司法書士に依頼した場合と比較すると1/4程度の1万円)、早く(最短7分)、簡単に作成することができるサービスです。司法書士に依頼するか、自社で時間をかけて書類を作成するか、という選択の中で、第3の選択肢として、テクノロジーを活用した「GVA 法人登記」を使ってもらうという形でシェアを増やしています。
2019年1月にスタートしたサービスですが、累計5000社以上が利用しています(2021年10月時点)。
特にコロナ禍になってからは、管理部門の業務を効率化するという背景から、大手企業が子会社の登記業務の運用や管理に利用するケースが増えました。
―リーガルテックのサービスが「GVAシリーズ」に名称変更されたということで、おめでとうございます。(インタビューさせていただいた日(11月25日)がサービスの名称変更日でした)
ー社会貢献の分野で取り組まれているのは、どういったことでしょうか。
弁護士としてのスタートアップ企業のサポートや、テクノロジー(IT技術)を使って、人が動いた時よりもコストが下げられる範囲を広げていくサービスを提供していくことなど、今までに解決されていない課題などです。
また、法律事務所としては、海外への事業展開です。現在、タイとフィリピンに法律事務所があります。大手事務所は、アメリカやヨーロッパに集中している状態なんです。GVA法律事務所の「G」Globalを実現するためにも、窓口になって、現地の弁護士を雇って、日系企業をサポートしています。日本のクオリティを保ったまま、日本語でコミュニケーションも取れますし、タイとフィリピンで活動する日系企業のサポートができるようになりました。コロナ禍で大変な時期もありましたが、タイやフィリピンへの海外進出が戻ってきています。今後も、アジアを中心に拠点展開を進めていきたいと考えています。
ーCSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)について、何か取り組んでいることはありますか。
地方だと、弁護士や司法書士などの専門家が近くにいなかったりする場合がありますが、GVAシリーズのサービスはオンラインでいつでもどこでも利用できるので、間接的に、地方の中小企業も支援することができています。
また、コロナ禍で「脱ハンコ」に注目が集まりました。出社が必要で、実現することが難しかった管理部門のテレワーク促進という社会課題が浮き彫りになりましたが、弊社で提供している「GVA assist」でこの課題に対しての貢献もできていると考えています。
「GVA assist」はAIが契約書のレビューを支援するサービスを提供しています。法務部門に所属する担当者が持っている契約書レビューのノウハウをこのサービスを活用して蓄積・共有していくことで、テレワークでの契約書レビュー業務の効率化、および品質向上をサポートしています。
―コロナ禍で、海外への進出など、大変だった部分もあると思いますが、逆にコロナ禍だからこそ、お家からなかなか出られない状況の中で、御社のサービスで助かったという方、多いんじゃないでしょうか。
そうだと嬉しいです。
ー社長にとって広報・PRとはどのようなものですか。
必要な時に、必要な人に情報が届くようにする大事なものです。実際にサービスを見ると、良さそう、使いたい、と思ってもらえるんですけど、例えば、提供しているサービス「GVA 法人登記」が必要になるのは、変更登記を行う必要がある2年に1度程度。タイミングが合わないと、忘れられてしまいます。登記に関わるようなキーワードで検索すると、「GVA 法人登記」のサイトがヒットするようにしたりしていますし、リスティング広告も効果的だと思います。
また、SNS(フェイスブックやツイッター)などを通じて自社の情報を発信できる中で、メディアに掲載されることは、認知度を上げるということだけでなく、自社ブランドの構築だと考えています。
ー御社の広報戦略で、気を付けていることや独自の手法などがあれば教えてください。
法務の専門性が必要になるため、アウトソーシングが難しく、取り上げられる媒体が、専門誌などと限られるため、正直、広報活動は難しいです。
ただ、ありがたいことに「スタートアップ法務」の分野においてGVA法律事務所や代表である私が広く知られているため、自らがSNS(フェイスブックやツイッター)などを活用して投稿できるニュース作りをしています。利用者が弁護士や法務担当者などの専門家になるため、広報担当がプレスリリースや記事の校正をしたのちに、法務的に問題がないか、違和感がないかなどを社内の弁護士に確認した上で、世の中に情報を出すよう心がけています。
★女子アナPR局からワンポイントアドバイス!
法務サービスはメディアなどで取り上げられにくいとおっしゃっていましたが、世の中の事象とどう関わってくるかなど常に最新の動向と御社のサービスがもたらす効果や役立てていることなどが結びつくよう表現できて発信できると良いと思います!
ー経営者として、広報・PRに期待することはどういったことでしょうか。
テクノロジー(IT技術)の現時点での限界があって、提供しているサービスは、まだ法務業務に携わったことがある人じゃないと、使いこなせないものになっていると思うんですよ。サービスの開発はこれからもしっかり進めて、法務業務に携わったことがない人でも使いこなせて結果をでるようにしていくので、広報・PRに期待することとしては、より多くの人たちにサービスの良さを知ってもらうことだと思います。
ー社長が気を付けていること、大切にされていることは何ですか。
「コミュニケーションの量」と「気が利くこと」です。
初めの頃、エンジニアとのコミュニケーションが甘いが故に、思っているものと違うものができたり、できないものをずっと追いかけていたり…ハマりました。自分で100%だと思って出したものが、エンジニアからしたら20%くらいにしか見えないというような話は、結構よくあります。どう一緒にすり合わせていくか、コミュニケーション力が問われるんですね。
社内でも、コロナ前からSlackというチャットツールを使っていますが、仕事の内容だけでなく、雑談もたくさんしています。例えば、学生の頃から好きだった競馬に最近、改めてハマっていて、社員でも競馬好きのメンバーが多く、それぞれが予想を報告し合ったりすることもあります。
また、会社の地下にバーカウンターがあって、金曜日の夕方に「Bar山本」がオープンするんですが、誰でも自由に行って、何の話をしても良いコミュニケーションの場を設けていて、社員に好評です。
(只今、コロナ禍でお休み中ですが、そろそろ復活!?)
―経営者とか弁護士とかって伺うと、敷居が高いイメージがありましたが、社員の皆さんと打ち解けていらっしゃるのは、コミュニケーションが鍵なんですね。ありがとうございました!!
インタビュアー撮影後記
スタートアップという言葉がまだないような頃に、スタートアップ企業をサポートしたいという社長の思いからはじまったGVA TECHですが、どうやって時代の変化をよむのか伺ってみたところ、「外部環境の変化というのをすごい気にしている」とおっしゃっていました。
法律とテクノロジーを組み合わせた新しい分野で最先端をいくためには、次に何がくるのか時代を読み、早過ぎてもダメだし、ちょっとだけ早い、半歩先のタイミングで動く(仕込む)。これこそが山本社長の手腕だと感じました。
法務に関わったことがない人でもわかりやすいサービス作り、そして、日本にとどまらず、海外への事業展開も今後、活発になりそうです。
■GVA TECH株式会社 代表取締役
弁護士法人 GVA法律事務所 代表弁護士
山本俊
1983年生まれ。三重県出身。岡山大学法学部卒業。弁護士になるなら「ちょっと変わった分野」に取り組んでみたいという思いを持っていた。山梨学院大学法科大学院を修了し、司法試験合格。鳥飼総合法律事務所に2年勤務した後、2012年にGVA法律事務所を設立。スタートアップ向けの法律事務所として、創業時のマネーフォワードを支援。2021年には全国法律事務所ランキング49位に!
2017年1月にGVA TECH株式会社を創業。リーガルテックサービス「GVA」シリーズの提供を通じ、企業パーパスである『「法律」と「すべての活動」の垣根をなくす』の実現を目指している。
企画・制作
女子アナメディアPR局
福岡県太宰府市出身。北は北海道から南は宮崎まで色々な土地で暮らしてきました。住めば都!地元の人以上に満喫し、楽しむことが得意です。現在は宮崎県在住で、宮崎サンシャインFMパーソナリティ。宮崎日日新聞社が発行する生活情報誌のサポーターとして、取材やリポートのお仕事もしています。3人の子育ても真っ只中。子供の目線も持ち合わせています。