私は広島で生まれ育ったということもあり、たくさんの平和教育を受けてきました。社会見学や子供会などで原爆資料館に何度も足を運びましたし、語り部の方の話を聞く機会も多くありました。
中でも印象に残っているのは、小学6年生の時、道徳の時間で見た『はだしのゲン』のアニメ。あまりにも悲惨で、怖くて、涙を流しながら見たことをよく覚えています。広島という環境もあり、“平和”というものが身近だったのかもしれません。
しかし、カルチャーショックを受けたのは、愛媛で働いていた時。8月6日の8時15分が、日常と何も変わらないことに驚いたのです。広島では、8月6日になると、早朝からテレビ局全局の放送が平和祈念式典の中継に切り替わり、同じ式典の様子が延々と流れます。そして、原爆が投下された8月15分、通勤通学中であっても、作業中であっても、多くの人が手を止めて、黙祷をします。私にとってこの光景は当たり前でしたが、この時、これまで受けてきた平和教育は当たり前ではなかったのだと知りました。
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【広島県】平和都市・広島から!書き損じハガキで始める“参加する支援”
目次
2021.06.01
こんにちは!テレビ愛媛、中国放送でのアナウンサー生活を経て、現在は広島で活動しています、久保田夏菜です。最近はコロナ禍ということもあり、仕事のスタイルの変化を日々感じています。特に増えているのが、オンラインでの講演。いただく依頼は、“平和”や“交際交流”などをテーマにしたものも多く、もしかしたら、このテーマは広島ならではかもしれないとも感じています。
私は、カンボジアの地雷原の村を毎年訪問することをライフワークとしていますので、カンボジアでの実体験や内戦から復興に向かうカンボジアの姿などをお伝えしています。そんな講演の中で思うことを、今回は書かせていただきます。
カルチャーショックだった8月6日
平和について考える入り口は何だっていい
私は「平和に触れるきっかけづくりを大切にしたい」という思いもあり、”平和”をテーマにした講演活動を続けています。でも、取り上げるのは『ヒロシマ』ではなく『カンボジア』。ご縁があった国ということもありますが、「平和について考える入り口は何だっていい」と思っています。“原爆が投下された”という歴史から“平和”について考えることは、とても大事なことです。しかし、平和への入り口はたくさんあってもいいのではないかと。まさに、渦中である五輪というスポーツ、何気ない平和な日常、イスラエルとパレスチナの衝突などのように、未だに絶えない多くの争い・・・。様々な入り口から、“平和”について考えることができると考えています。
私が提案していることの一つには、カンボジアの地雷原から生まれた“復興酒を嗜もう”というものもあります。楽しくお酒を飲むことが、“消費”という形で支援にもなります。さらに、お酒が生まれるまでのストーリーに興味を持つことが、平和について考えるきっかけにもなるはずです。
アプローチの仕方は様々ですが、最終的に『平和について考え、平和を守る』ということに繋がればいいなと考えています。
地雷原から生まれた“復興酒”とは?
ではここで、先ほど登場した“復興酒”についてご紹介します。カンボジアは、1990年代前半まで内戦が行われていた国で、未だに約600万個の地雷が残っているといわれています。地雷は国の復興を妨げている内戦の大きな爪痕ともいわれていて、地雷の危険とともに生活している人たちも多くいます。
そんな中、タイ国境近くのバッタンバン州にある『タサエン村』から誕生したのが、『ソラークマエ』という復興酒です。そのお酒は、村の復興を目的に生まれたもので、地雷が撤去された土地で収穫されたキャッサバ芋から作られていて、日本をはじめ、世界各国に出荷されています。
カンボジアは内戦終結から約30年、まさに今、復興の中にいる国です。このお酒からカンボジアを支援することもできますし、そのお酒が“平和”について考えるきっかけを与えてくれるとも思っています。
書き損じハガキで始める“参加する支援”
さらに、「平和について考えるために大切なことは、参加すること」だとも思っています。何か大きな支援をしようと思うとなかなか難しいかもしれませんが、たっ“た一枚のハガキ”でカンボジア支援ができるのです。
自宅に眠っている書き損じハガキ100枚は約135㎡の地雷原の地雷を撤去する費用、800枚は地雷処理隊員1人の1ヶ月分の給料と同じ額になります。ハガキ集めでしたら、きっと誰にでも今すぐにできることだと思います。
どんな小さなことでも、参加すること、動くことが“平和を守る”ことに繋がっていくと考えています。
今、コロナ禍で活動が制限されているからこそ、この書き損じハガキ集めの呼びかけに力を入れています。コロナ禍前のように、現地を訪問して伝えるということはできませんが、ハガキ集めなら広島にいながらでもできます。「平和を考える入り口は何だっていい」と同様、「平和への関わり方も何だっていい」と考えています。
今後も、平和都市・広島から“私なりの平和への思い”を発信していきたいです。
自然大好きアナウンサー。2年前に田舎に移住し、毎日1時間半かけて職場へ通う。仕事は、バラエティ番組や情報番組が中心。休日は、畑仕事に汗を流す。ライフワークは、カンボジアの田舎にある地雷村に通うこと。現地では、自らカメラを回し、取材を行い、内戦の爪痕に苦しむ村人の現状を伝える活動にも取り組む。2018年、ヒロシマ平和創造基金「国際交流奨励賞」受賞。